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実施日主 催 団 体大 会 名
2011 年 11 月 27 日(日)大阪市天王寺商業高等学校第 60 回 全国計算競技大会

 昨年 11 月 27 日, 大阪市立天王寺商業高等学校にて, 同校 100 周年記念第 60 回全国計算競技大会が開催されました。

 この高校は統廃合の対象となっており今年度で廃校が決定。このため, 事前からアナウンスがあったとおりこの大会は今回の記念大会が最後の大会ということで, きっとそのためでしょう, 参加人数が非常に多かったことも今回の特徴でした。会場の大講堂では1階には観客席を作ることができず, 観客は全員 2 階席からの観戦を余儀なくされました。

 ちなみにその実参加者数は, 珠算部門が高校生 57 名, その他 145 名, 計算機部門が 14 名, 合計 216 名でした。商業高校主催の大会ということで, 高校生が優遇されるシステムとなっていることと, 計算機部門が存在することが特徴です。


 それでは, ちょっと賞味期限切れな感も否めませんが, そんな大会のレポートをお届けしようと思います。


この大会の良さ

 ところで私自身, この大会は以前から気になっており, 毎年出たい出たいと思っていました。もちろん実力不相応であることは十分承知の上です。しかし, 毎年北海道からは大量に参加者がおり, その方々かから口々に「この大会は良い!」という評判を聞いていました。

 この大会の良さはいくつかあると思います。もちろん参加してみてわかったことも含めて列記してみますと

(1) 進行役の金本先生の軽妙なトーク, 合わせて選手の視点に立った運営をしていると感じること
(2) 大会のテンポが良いこと
(3) 競技の種類が多く, 個人競技では入賞の見込みがない私のような選手でも希望が持てる競技も存在すること
(4) 逆に超高レベルバトルもあり, 全国一流の選手にとってもやりがいを持てること
(5) もちろん (1)〜(4) のおかげですが, 全国一流の選手が大勢集まる, つまりそういったレベルの競技を参加者も観戦者も体感できること

となるかと思います。

 とにかく, 9 時から 17 時まで, 開・閉会式と昼食時間を除く 6 時間の間に, 「個人総合競技(7 種目)」, 「応用計算予選」, 「団体特別競技」, 「読上暗算競技」, 「読み上げ算競技」, 「応用計算決勝」, 「種目別競技(7 種目)」, 「個人特別競技」と, 普通の大会ではあり得ないほど大量の競技が行われます。これらを 6 時間の「番組」として見ても全然飽きが来ませんし, 楽しむことができます。

 その間, 選手の移動やら机の移動やらもあり, 選手もそれらに協力します。そういった意味では, 選手も「しっかり大会をスムーズに進行させるべく協力しながら参加する」ことが前提となっていることがわかります。もちろん, どこかに明記されているというわけではありませんが, 自然とそんな雰囲気が作られていて, かつ(協力的という意味で)そういったレベルの選手ばかり集まっているということでもあるかと思います。

 大会の運営には同校の生徒も活躍しています。そういった生徒の指導も含め, この大会の運営者たちの努力は, その経過を見なくてもこの大会そのものを見るだけで十分察することができます。大会運営に向けた姿勢は, 本当に素晴らしいの一言です。


個人総合競技

 まず, 個人総合競技についてです。

 個人競技と書きましたが, 3 人の合計得点によって団体の順位も決定しますから, 団体競技の内容も兼ねていることになります。その辺りは, 他の大会と同様です。  また, 計算機部門があることにも触れましたが, こちらも同じ問題を使用しています。

 最初にお断りします。これらの記事では, 氏名を公表して良いと表明されている選手のみ選手名を示しております。もしも「私も名前書いて良いですよ」という方は, 掲示板でもメールでもその旨表明していただけると順次対応いたします。

 昔から珠算競技に参加されている方ならおわかりかとおもいますが, 簡単に言いますと個人総合競技の内容は旧「国民大会」の問題そのものです。1 種目 150 点満点, 合計 1,050 点満点となっています。

 なお, 今大会では, それぞれの種目で 140 点以上の者が「種目別競技」への出場することができるシステムとなっています。


(1) 乗算

 実・法合わせて 11 桁の問題を 30 問, 5 分。前半の 15 問は実数計算, 小数第 4 位未満四捨五入。後半 15 問は実が「円」のため, 整数位未満四捨五入。

 例えば


 20,468×654,321

 1,357,901×3.142


 日珠連検定段位のレベルなので, 全珠連十段を取得した程度では終わらない計算量なのですが, 実際にはこの大会の参加者のレベルが非常に高いため, 更に難易度を高くするために端数処理がかなり微妙な問題が数多く取り入れられています。例えば


 1.539×53.02141


のような問題です。それでも今回は, 満点 21 名, 140 点以上が 42 名いました。


(2) 除算

 法・商合わせて 11 桁の問題を 30 問, 5 分。前半の 15 問は実数計算, 小数第 4 位未満四捨五入。後半 15 問は実が「円」のため, 整数位未満四捨五入。更に, 前半, 後半ともに 1 問ずつ剰余問題が含めれています。

 例えば


 12,000,992,976÷12,789

 56.056÷0.0654

 12,345,678,901÷98,765 【余り】 (剰余問題)


 実のところ, 暗算種目はともかく, 珠算種目で乗算と除算の桁数が同じというのは珍しいことです。なぜなら, 大抵は検定問題を基準に作問するからで, 検定は全珠連も日珠連(日商)も除算は乗算よりも 1 桁少ないのです。桁数がズレている他の理由としては, 初級から順序よくそろばんの習っていくと, 除算よりも乗算の方が先に学ぶから, というのもあるかも知れません。全日本珠算選手権大会も, 全珠連段位の問題を用いているため, 除算が1桁減となっています。同じ全珠連でも, 通信大会は暗算メインで考えられたのか, 同じ桁数です。

 以上の理由からか, 乗算と除算が同じ桁数の場合, 除算の方が難しく感じる方も多いようです。かく言う私も, 通信大会レベルだとさすがに除算の方が楽に終わりますが, この大会の問題は乗算の方が題数が入ります。

 しかしこの大会はそんなことはお構いなし。昔からある国民大会レベルとはいえ, それでも簡単に感じる選手が多いため, 乗算同様端数処理で「選手の自信をなくさせます」。今回の大会は特に新しいタイプのものが出現したようで, 口々に「○○問目, こうなったんだけど, なった?」などという会話が休憩時間にあちらこちらから聞かれました。例えば


 32,323,250,074÷53,097

 123.45790788÷198.7249 (新タイプ)


のような問題です。それでも今回は, 満点 15 名, 140 点以上が 47 名いました。


(3) 見取算

 5 桁〜11 桁 15 口 120 文字の問題を 15 問, 5 分。その中に, 補数計算 2 問。

 数字量だけで言うと, 最低でも 360 文字/分 のスピードが必要ということです。日珠連段位が, 10 桁 10 口 100 文字の問題 30 問を 10 分, つまり 300 文字/分 なので, ちょうど文字数が 2 割増です。それでも, もともと日珠連段位は見取算の難易度が低いと言われているため, これでもこの大会に出る選手にとってはかなり易しめです。ちなみに, 全珠連段位は, 243 文字/分 です。

 乗算や除算と異なり, 同じ条件で問題の難易度を上げることが難しいため, 非暗算種目の中ではこの程度(日珠連十段レベルより上)の問題でも難易度が低く感じられます。

 実際に今回, 満点 45 名, 140 点以上が 69 名いました。全参加者の 5 分の 1 程度が満点だった, ということになります。


(4) 伝票算

 5 桁〜 9 桁 15 枚 100 文字の問題を 15 問, 5 分 30 秒。

 そろばんで弾く場合, 最低でも 273 文字/分のスピードが必要ですが, 暗算で 3 桁毎に分けて計算する場合, 平均 2.03 枚/秒 のスピードで終わることになるため, ちゃんとめくりの練習をしている方にとってはかなり難易度が低い問題と言えます。

 現在, 日珠連検定では伝票算は完全に廃止されているため, 検定問題と比較することはできません。全珠連段位は, 222 文字/分。3 桁毎に分けためくりスピードは, 平均 1.62 枚/秒(7 桁問題は 2 回で計算), 或いは 1.86 枚/秒(7 桁問題から 3 回で計算)です。これまでの種目は大体全珠連のスピードの 1.5 倍の計算量だったことを考えると, 特に伝票算の難易度の低さが目立ちます。

 実際に今回, 満点 49 名, 140 点以上が 71 名いました。単純に数字量が見取算よりも 25%ほど少ないことから, 見取算では計算機部門で 140 点以上が 1 人もいなかった(さすがに秒速 6 文字超はキツい!)のに対し, 伝票算では 4 名出ています。


 ……もちろん, これをそろばんを用いて計算する私にとっては, 最悪の種目となります(汗)


(5) 見取暗算

 3 桁〜 6 桁 15 口 60 文字の問題を 15 問, 2 分。その中に, 補数計算 2 問。

 今の日珠連段位暗算検定は 6 桁揃 10 口 60 文字ということで, 文字数だけ見ると450 文字/分(7.50 文字/秒)と同じ難易度です。しかし, 全珠連の暗算検定段位の見取暗算が 290 文字/分(4.83 文字/秒)であることを考えると, そもそも日珠連の方の難易度が異常に高い, と言えなくもありません。

 このためでしょうか, 今回は満点 33 名, 140 点以上 50 名と, 暗算種目の中では最も人数が少ない結果となっています。


 ちなみに, この種目以降の暗算種目の間, 計算機部門参加者は休憩時間となります。とはいえ実際に暗算でやっている選手の邪魔はできませんから当然席を立ったりはできず, おとなしく座って待つことになります。


(6) 乗暗算

 実・法合わせて 6 桁の問題を 30 問, 1 分 30 秒。すべて整数問題。

 例えば


 123×456

 3,141×97


 6 桁の数字を 30 個書くだけで普通の人は 1 分は掛かりますから, 答えを書いてから 1 秒以内に次の問題の答えを書き始める, という状態でようやく終わる問題量です。

 とはいえ, 日珠連段位暗算検定と同等のレベル(2011 年に問題改訂となる以前のもの)なので, この大会の問題としてはこれまた低レベルの問題となっています。

 実際今回, 満点 50 人, 140 点以上 82 名でした。


(7) 除暗算

 法・商合わせて 6 桁の問題を 30 問, 1 分 30 秒。すべて整数問題。

 例えば


 248,454÷258

 665,475÷7,005


 乗暗算で先述のような状態ですから, この種目がどのような状態になるかは想像するに難くありません。実際今回, 満点だけで 118 名(!), 140 点以上 141 名という, 半数以上が満点という恐ろしい結果となりました。


 以上ですが, すみません, 文章中大量に「簡単」などと書かれていますが, あくまでもこの全国大会としての難易度です。普通にそろばんを学んでいる方々にとっては, 最後の除暗算でも「1 分 30 秒で 30 問!? ムリ!」であることは重々承知しています。気分を害された方がいたなら, 申し訳なく思います。

 ただ, 全国大会のレベルを多少なりとも体感して欲しく, このような表現を使わせていただきました。ご了承下さい。


 今回の記録ですが, 以上 7 種目を 1,050 点満点で争ったこの総合競技。

 個人の部の優勝は, 大関一誠選手, 1,050 点満点でした。このような嫌らしい(?)作問にもめげず満点を取るというのは, 並大抵のことではありません。

 なお, 2 等(3 名)には, 1,040 点で若松尚弘選手が入っています。

 団体の部は, 優勝の得点が 3,120 点(1,045 点, 1,045 点, 1,030 点)。4 位に一條珠算塾A(大関, 若松, あと 1 名)が入っており, その得点は 3,045 点でした。


種目別競技

 個人総合競技の各種目で 140 点以上の者が出場権を得る, まさに全国一のスピードと正確さを競う競技, それが種目別競技です。

 例年は, 百分の一秒まで計測出来る, クイズ番組さながらの早押しボタンによって競技が行われていましたが, 今回はこの競技への出場者全員で一気に争われました。だからといってそのレベルが落ちたとかそういったことはないかと思います。ここで, 今回の大会で出された記録をお伝えします。


 さて, 今回の種目別競技は, 1 種目毎抽選によって「通常点」か「ストップ点」かが選ばれてから競技がスタートしました。通常点は何の変哲もない, 1 問 1 点での採点です。ストップ点とは, 例えば 5 問目で間違えたら 6 問目以降は採点しない(ストップ)というルールで, 1 問目からの連続正解 1 問につき 1 点での採点となります。


(1) 乗算

 乗算は, 通常点で争われました。問題量は 20 問, 制限時間 1 分です。

 もともとは, 5 分で 30 問でしたから, 1 問 10 秒のペースで終わる競技でした。そろばん経験者ならおわかりかと思いますが, これでも常人では到底終わらない……つまり, 全珠連の十段レベル(桁数こと若干異なりますが, 7 分で 30 問です)では終わらないレベルのスピードです。

 普通に考えて, 30 問が今回 20 問になっただけですから, 同じスピード(それでも高速ですよね)で計算したとしても 3 分 20 秒は掛かる計算になります。逆に考えると, 1 分では 6 問しかできないということになります。


 さて, 今回の記録。優勝:17 点, 準優勝:16 点, 3 位:15 点(2 名)という記録でした。もちろんこの方々にとっては, 制限時間 5 分の総合競技も制限時間 2 分で満点取れてしまうレベル, ということになります。

 というよりも, この乗算は答えが 11 桁。もちろん小数問題もありますから若干数字の数は減るでしょうが, 平均して 9 桁としても, 17 点取るには 153 文字書いた計算になります。これを 60 秒で割ると, 1 秒で 2.55 文字です。実際にはコンマや小数点も書きますから, もう少々スピードが必要でしょう。

 ここで問題とその解答を持っている方は是非チャレンジして欲しいのですが, 1 分で全力で答えを写したとして何問書けるのか。これをご覧になっている殆どの方は, 17 問問も書くことすらできないかと思います。

 そう, 数字を速く正確に「読めるように」書くこと, これもそろばんの達人の方々習得している技術なのです。


(2) 除算

 除算は, ストップ点で争われました。問題量は 20 問, 制限時間 1 分です。

 普通に考えると, 乗算よりも除算の方が素早く答えを書くことができますが, そこは「ストップ点」。間違えたら終わりというプレッシャーが, 選手の手を遅らせることになります。

 今回の記録は, 優勝:13 点, 準優勝:12 点(若松尚弘選手), 3 位:10 点でした。

 多分, 通常点なら満点近く行くという選手もいるでしょう。何故なら, 総合競技で述べたようにこの除算は恐ろしいほどの微妙な端数処理の問題が含まれているので, 場合によってはそういった問題は「直感で」最後の桁を書いて最後まで書き続ける, という技が通用するからです。しかし今回はストップ点。この「直感」で間違えると以下採点してもらえませんから, こういった問題にも律儀に対処する必要があるのです。


(3) 見取算

 見取算は, 通常点で争われました。問題量は 10 問, 制限時間 1 分です。

 これは説明不要でしょうか。

 今回の記録は, 優勝:7 点(2 名), 3 位:6 点(13 名!)でした。もちろん, 6 点 13 名はその後同点決勝を行い, 3 位となる 1 名を決定しました。

 1 分で 7 問正解となると, やはり本来の 15 問だと 2 分程度ということになります。計算スピードを計算した数字の数で言いますと, 840 文字/分 以上, 14 文字/秒 以上のスピードで計算したことになります。


(4) 伝票算

 伝票算は, ストップ点で争われました。問題量は 10 問, 制限時間 1 分 6 秒です。

 これも説明不要でしょうか。

 今回の記録は, 優勝:7 点, 準優勝は 6 点(2 名)でした。

 伝票算の場合, やはりその肝となるのは「めくり」のスピードでしょうか。1 問を 3 回に分けたと仮定すると, 7 問正解するには 315 枚以上めくった計算になりますので, 5.25 枚/秒以上のスピードでめくり続けたことになります。

 私の予想だと, それはさすがにキツい選手が多いと思われ, 2 回に分ける選手も多いことでしょう。すると 3.5 枚/秒以上のスピードが必要です。やってみるとわかることですが, これでも難しいことです。


 ちなみにここまでは, 計算機部門からの出場者もいました。通常, 全珠連の十段程度のレベルだと, 乗算や除算は計算機の方が速く, 見取算以降はそろばん式暗算の方が速いのですが, この大会のレベルになると全種目暗算の勝ち。「電卓を叩く時間」はまったく存在しません。


(5) 見取暗算

 見取暗算は, ストップ点で争われました。問題量は 10 問, 制限時間 24 秒です。

 ここからは暗算種目。更に恐ろしい超速の戦いとなります。

 今回の記録は, 優勝:6 点(2 名), 3 位:5 点(14 名)でした。もちろん, 通常点ならあと 1〜2 点高かったか可能性もあるかと思います。

 それでも, 今回の記録でも 4 秒で 1 問のペース。通常の総合競技の倍速以上。計算した数字の数で言いますと, 15 文字/秒 以上のスピードです。


(6) 乗暗算

 乗暗算は, ストップ点で争われました。問題量は 20 問, 制限時間 18 秒です。

 今回の記録は, 優勝:12 点(2 名), 3 位:11 点(7 名)でした。18 秒で 12 点って, 1 問 1.5 秒で計算した, いや「書いた」ことになります。この種目, 答えは 6 桁, もしくは 5 桁ですから, コンマのことも考えて 1 問 6 文字として計算すると, 1 秒間で 4 文字書き続けたということになります。

 そう, このレベルになると, そもそも 6 桁程度の乗暗算や除暗算は「一目で」答えは出てしまい, その結果そろばん種目よりも「数字を書くスピード」による勝負となるのです。


(7) 除暗算

 除暗算は, 通常点で争われました。問題量は 20 問, 制限時間 18 秒です。

 予選通過がそもそも 141 名もいただけあって, 最も「点数の取りやすい」種目。その予想通り, 1 問を 0.9 秒で書き続けなければならないこの競技ですが, 何と 20 点満点が 11 名も出てしまいました。恐ろしいことです。

 というわけで, この 11 名による決勝が行われました。そのレベルは, 問題量 20 問(変わらず), 制限時間 10 秒(!)というものでした。

 その結果, 優勝:12 点(大関一誠選手), 準優勝:11 点, 3位:11 点(若松尚弘選手)でした。11 点は他に 2 名いましたが, 更に再度決勝を行った結果の順位となっています。

 えぇ。普通, そんなに書けませんて。


応用計算競技

 今回は, 応用計算競技, 読上算競技, 読上暗算競技についてお伝えします。

 読上算や読上暗算は, 多くの大会で取り入れられている競技ですが, 応用計算を取り入れている大会は最近ではとても少なくなりました。


 応用計算競技は, まず全員で予選を行います。これは, 旧国民大会の応用計算を, その難易度を更に多少高くした問題で行われてます。予選は, 15問を7分で行われました。

 問題は転載禁止なのでそのまま掲載するわけにはいきませんが, いわゆる「商業計算」の問題です。問題の種類のみ列記すると


(1) 手形割引 〜 手取金を求める問題。
(2) 仲立人 〜 売り主が支払った手数料を求める問題。
(3) 複利法 〜 負債をいま一括で返還する場合に支払う額を求める問題。表利用。
(4) 換算 〜 ユーロを円に換算する問題。
(5) 複利法 〜 複利利息を求める問題。表利用。
(6) 減価償却 〜 定率法で, 第3期末償却額を求める問題。
(7) 単利法 〜 元利合計から貸し付け金額を求める問題。
(8) 換算 〜 ドル/米t を 円/kg に換算する問題。
(9) 投資 〜 手数料込みで株券の支払総額を求める問題。
(10) 複利計算 〜 (3)と同じだが, 端数期間がある問題。表利用。
(11) 売買損益 〜 見込利益, 割引率, 損失額から定価を求める問題。
(12) 手形割引 〜 額面金額, 支払代金から買入価格を求める問題。
(13) 売買損益 〜 原価, 諸掛り, 見込利益率, 値引率・額から, 全体の利益額を求める問題。
(14) 複利法 〜 積立目標額から毎期の積立金を求める問題。表利用。
(15) 売買損益&換算 〜 仕入量(yd), 諸掛り(円), 売価(円), 利益額(円)から, 単価($/yd)を求める問題。

 予選通過ラインは, 140 点以上は無条件通過, 130 点以上が(予選通過のための)決勝を行い, 最終的に 11 名の決勝戦出場者が選ばれました。

 ちなみに私は, 予選 100 点でした。残念!


 応用計算競技の決勝は, 観客の前に 11 名が横 1 列に並ぶ形でセッティングされての進行です。ちなみに, 決勝進出者は自動的に 3 等までの入賞が保証されています。あとはその順位の決定を行うことになります。

 1 問ずつ問題が配付され, それぞれ異なった制限時間で問題を解き, 正解する毎に 1 ポイントが与えられます。最初に 5 ポイントを取った選手が優勝, その時点での得点により 2 等と 3 等を決定します。

 なお, 決勝の問題は観客にもすべて配られ, 「えーっ, この問題をこの時間で!? 無理!」などの声が聞こえてきます。この辺りも, 観客にも配慮した競技進行を感じ取ることができます。


 1 問目は, 複利法の問題。1 期毎の年金積立額から年金の終価を求める問題, 表を利用します。単純に表の値から 1 を減じた数値に積立額をかけ算するだけという簡単な問題ですが, その制限時間は 25 秒。小数第 1 位が「.5」となる問題だったものの, 焦らず計算すれば大丈夫と思われる問題でした。

 結果は, 7 名が正解でした。1 問毎, 簡単と思われる問題でも制限時間がプレッシャーとなる厳しい競技です。


 2 問目は, 投資の問題。償還年数, 利率, 買入価格から, 単利最終利回りを求める問題です。これは, 買入価格が 100 円を超えているちょっとひねった問題で, 制限時間 20 秒ということもあり, 難しいだろうと思われた問題でした。

 結果は, その予想通り正解者はたったの 1 名でした。


 3 問目は, 売買損益の問題。原価, 利益額から諸掛込原価を求める問題。条件が少なすぎると思ったら, 「諸掛り, 値引き額, 販売後の利益額が同額」というひねった条件が追加されていました。しかしよくよく考えると, この最後のひねった条件が肝で, パズルのような「気付けば殆ど計算不要」という問題です。

 制限時間 25 秒, この中でこの「パズル」に気付けば一発で正解できましたが, 正解者は 2 名だけでした。正解発表の直後, 選手から「あぁ!」という感嘆とも悲痛(?)とも受け取れる声が聞こえて来ました。


 4 問目は, 複利法の問題。元金から利息を求める問題, 表を利用しますが, 端数期間もありますから計算は面倒です。制限時間は 35 秒でした。

 結果は, 正解者 5 名。制限時間に救われた選手も多かったようです。


 5 問目は, 減価償却の問題。定額法で, 第 10 期末原価償却累計額を求める問題, 表を利用します。一見簡単そうですが, 「残存価格 0 %」「毎期償却額の 10 円未満切り捨て」という 2 重の罠が敷かれていました。制限時間が「ふつう」ならもちろんそんなこと気付く選手ばかりですが, その制限時間が何と 12 秒, 鬼のようです。

 結果は, 何と正解者ナシ。制限時間さえあれば……


 6 問目, 単利法の問題。元金と利息から, 貸付期間を求める問題。これまた制限時間さえあれば何とかなる問題ですが, この逆算問題でまたもや制限時間 12 秒。この大会, ホントに鬼です。

 結果は, 正解者 1 名! この時点で, この 1 名の正解者が 5 問正解にリーチとなりました。先程の 5 問目以外, 全問正解していることになります。


 7 問目, 手形割引の問題。普通に手取金を求める問題でした。制限時間は 22 秒。

 結果は, 7 名が正解。ここで, 先程リーチだった選手の優勝が決定, 競技を終了しました。

 2 等は 3 点以上の 3 名でしたから, 如何に優勝者がダントツだったかがわかります。なお, その 3 名の中には大関一誠選手が入っています。以下, 残りの 7 名が 3 等でした。


読上算競技, 読上暗算競技

 次は読上暗算について。その次にお伝えする読上算競技も含め, 読上種目は「一算落とし」にて争われます。「上位先決」な大会が多い中, 1 問も落とせない正確性と緊張感に打ち勝たなければならない一算落としによる競技もなかなか良いものです。

 しかし, ここは恐ろしいレベルの選手が集う全国計算競技大会。一応「予選」と銘打った最初の 3 問が存在するのですが, はっきり言って飾りのようなものです。2 問以上正解で予選通過, とは言うものの, 一応一瞬だけ挙手をさせて確認もせず決勝に進みます(笑)。ちなみにその 3 問とは, 3 桁加算, 3〜4 桁加減算, 3〜5 桁加算でした。まぁそれでも, 1 問もできずに選手が暇することを防止した, これも選手のことを配慮した措置, ということなのでしょう。

 席替えも何もなく, そのまま決勝に進みます。ここからが鬼。1 問 1 桁のペースで桁数(レベル)が上がっていきますから, 9 問目には 5〜11 桁(15 口)になっていました。この時点で(連続)正解者 8 名, 入賞枠が決定です。

 10 問目は初めて同じ桁数である 5〜11 桁加減算でした。ここで 4 名が脱落, その 4 名が 3 等に決定です。この中には, 若松尚弘選手が入っています。

 残り 4 名での 11 問目は, 5〜12 桁加算。ここで 2 名が脱落, その 2 名が 2 等に決定です。

 残り 2 名による 12 問目は, 5〜13 桁加算。ここで優勝が決まり, 不正解だった方は 2 等となりました。


 読上暗算, ものの 10 分程度で終わったかと思います。恐ろしい競技スピードです。


 次は読上算です。予選は, 4〜7 桁加算, 5〜8 桁加減算, 5〜9 桁加算の 3 問で, 2 問以上が予選通過ですが, 読上暗算同様の「スルー」進行です(笑)。

 こちらも 5〜10 桁加算, 5〜11 桁加減算(いきなり補数計算でした)と上がっていきましたが, 読上暗算よりはできる選手が多く, 読み手と選手の勝負, といった感じでした。

 7〜13 桁(15 口)加減算 56.0 秒で, たったの 7 名が正解。途中でいやらしい位の繰り上がり, もしくは繰り下がりがあったらしく(筆者はこのレベルでもできませんので詳細はわかりません), 読みのスピードも大したことはなかったものの一気に脱落した瞬間でした。

 入賞枠があと少々あるということで, この問題以前まで全問正解だった選手による敗者復活です。7〜13 桁加算 51.0 秒, 7〜14 桁加算 47.8 秒, 7〜14 桁加減算 46.1 秒とスピードが上がっていき, ここで 2 名だけが正解し, 3 等入賞の 2 名が決定しました。この 2 名の中に, 大関一誠選手が入っています。

 ここでさきほどの 7 名の順位付けが再開です。7〜14 桁加算 37.3 秒という超速問題で 2 名正解, このどちらかが優勝というところまで決まりました。不正解の 5 名も, 全員を 2 等にしても 3 等にしてもアンバランスのため, 競技を続けます。

 7〜14 桁加減算 46.0 秒, 加算 36.6 秒と正解者が出ませんでしたが, 加減算 45.5 秒で, 不正解組 5 名中 1 名が正解して, この選手の 2 等が決定です。

 次の問題から 7〜15 桁にアップ, 加算 44.8 秒で, 不正解組残り 4 名中 1 名が正解し, この選手も 2 等に決定, 不正解組で残された 3 名が 3 等となりました。

 あとは優勝を賭けた 2 名による一騎打ちです。加減算 48.4 秒, 加算 41.5 秒, 加減算 43.1 秒と両者正解が続き(恐ろしい……), 読み手の意地による加算 35.3 秒(!)は両者不正解。そして加減算 43.1 秒で遂に優勝者が決定しました。多少時間が掛かりましたが, この一騎打ちは非常に見応えがあり, 1 問毎に両者が正解の挙手をしたり, しなかったりの度に「おぉ!」という声が聞かれました。


団体特別競技, 個人特別競技

 最後は, 団体特別競技, 個人特別競技についてお伝えします。

 ……と言いたいところですが, 個人特別競技は大会中その競技が始まるというときにようやくその内容を知らされるというものですから, ここでは紹介しないことにします。ちなみに今年は, 「鏡から見た数字」や「裏からみた数字」, 「ひっくり返った数字」などによる乗暗算, 除暗算, 見取暗算競技でした。簡単そうでめちゃくちゃ難しかったです……

 というわけで, 以下団体特別競技についてお伝えします。これまでの 4 回とはちょっと毛色の異なるレポートとなります。


 私(たち?)が本命とみていたこの競技。個人総合競技ではまったく歯が立たない私たちでもコッソリ優勝を狙えると睨んでいました。団体 3 人の協力体制がものを言う, スピードだけで勝負が決まるわけではない, ないなかなか楽しい競技です。

 問題は封筒に入っています。封筒の中には, 問題用紙 3 枚, そして小さな解答用紙 1 枚が入っています。「用意, 始め!」という恒例の合図と共に問題を出し, チーム内で 3 枚の問題を分け与えるところから, この競技はスタートします。


 問題用紙 3 枚は A, B, C となっていて, それぞれ数字が違う問題となっています。A, B, C それぞれの最終的な答え 1 つずつを小さな解答用紙に記入し, その 3 つの数を足したり引いたり(指定されています)した 1 つの答えが最終的に計算され, この答えのみ審査することとなります。

 この答えを記入したら即座に挙手, 会場の担当の先生がやってきて, 正解なら「ご名!」(「ごめい」=「ご名算」の略)と叫んでくださり, ステージ上から順位を言われます。不正解なら「バツ!」と叫ばれ, やり直しです。

 最後の答えのみ審査されるので, 誰のどの答えが間違えているかまったくわかりません。正直, 一度バツを喰らったら最後, 最初からやり直すハメに遭います。もちろん, 「この辺りが怪しい」とヤマを張ってやり直すことも可能ですが, それで即座に直すことができるというのは相当運が強くなければ無理でしょう。


 さて, 1 枚の問題用紙の内容もなかなかヘビーです。個人総合競技と同じレベルの乗算 5 問, 除算 5 問, 伝票算 2 問, 見取算 2 問, そして応用計算 2 問が印刷されています。一見簡単そうですが, それぞれの問題が連動しています。

 乗算 5 問の答えを, 足したり引いたり(指定されています)し, 「乗算の答」を算出します。練習を開始した当初は, この「足す」と「引く」を良くみていないことによる間違えも多々ありました。

 除算 5 問の答えも乗算同様足したり引いたりし, 「除算の答」を算出します。

 伝票算 2 問は, それぞれ「伝票算の答A」「伝票算の答B」となります。

 見取算 2 問には, 1 問につき 2 ヶ所, 計 4 ヶ所の空欄があり, それぞれ「乗算」とか「除算」, 「伝票算A」「伝票算B」と書かれています。そう, ここにその数値を入れないと, 見取算を開始できないワケです。

 最後の応用計算 2 問にも, それぞれ空欄が設けられており, それぞれ「見取算A」「見取算B」と書かれています。もうおわかりですよね? その数値がなければ応用計算を開始できない仕組みなのです。

 途中で間違えたら以下すべて間違うことになりますから, どの計算も一発で 100 %正解できる実力が必要(=一発で正解できるギリギリのスピードで計算することが必要)となります。


 最終的に, 小さな解答用紙の答さえ合えば良いので, ぶっちゃけて言いますと 1 人で 3 枚計算しても良いのです。過去には, 2 人チームで優勝したこともあるそうです。しかし, 正確ささえあれば 3 人チームが最も有利であることは間違いありません。

 しかしそこには作戦も必要です。例えば私のチームの場合, 中学生 1 人と, 私を含めた大人 2 名の計 3 名によるチームだったのですが, 中学生は応用計算が不得意。よって, 最初に封筒から問題を出した時点で最も応用が易しいものを彼に渡すことにしていました。

 次に, 私の伝票算の悲惨さにも定評がありました。よって, 私は伝票をやらない作戦を立て, 練習していました。具体的には, 私が「乗算」(時間に余裕があれば「除算」も), もう一人の大人が「伝票算」を行い, できたら問題用紙を交換。私が既に「伝票算」の答えが記入されている問題の残りを, もう一人が「乗算」(+「除算」)の答えが記入されている問題の残りを計算するという作戦でした。幸いなことに, 私が「乗算」 5 問を計算(ついでに合計を求める)する時間と, もう一人が「伝票算」 2 問を計算する時間には大差ありませんでしたので, それはなかなか私たちに好都合な作戦でした。


 5 分強という恐ろしいタイムで, 1 チーム手が上がりました。読上暗算優勝者を抱えるそのチームは, スピードでは間違えなく日本一の団体でしょうが, 結果は「ダメ!」。このチームの 3 名には失礼ですが, これだからこの競技は面白いのです。この後, 3 等入賞が決定しきるまでこのチームが再度手を挙げることはありませんでした。つまり, 間違えを発見出来なかったということです。本当に恐ろしい競技です。

 私たちは珠算塾の B チームだったわけですが, 大関選手や若松選手を有する A チームも「ダメ!」でした。本当に恐ろしい限りです。

 そういうしているうちに, 7 分以上経過しました。大抵, 私が小さな解答用紙を握ることになりました。計算スピードの関係もありますが, もう一人の大人の選手は計算が終わり次第隣の中学生の応用の確認をしていたのです。

 そろそろ終わるぞ! と思ったそのとき。高校生のチームが「ご名!」となりました。そのタイム, 7 分 59 秒。なかなかの好タイムでした。私たちの練習でのベストよりも速かったので, これは仕方がない結果だったように思います。

 そして私が答えを記入し, 挙手。会場の先生がやってきました。結果は「ご名!」, 見事一発正解。2 等に輝いた瞬間です。練習で立てた作戦が功を奏しました。特別競技とはいえ, 全国での入賞はやはり嬉しいものです。

 残念なことは, 多分挙手はこちらの方が速かったと思うのですが, 「ご名!」の声が速かったもう 1 つのチームが 2 等の 1 席になり, 私たちが 2 席となったことでしょうか。まぁ 2 等には違いありませんからヨシとします。タイムは 8 分 19 秒と 8 分 20 秒という, 当然の 1 秒差でした。ちなみにこの 8 分 20 秒というタイムは, 練習で出していたベストタイムと同じ程度でしたから, かなり良い結果だったと思います。


さいごに

 というわけで, この第60回全国計算競技大会は無事閉幕しました。こんなに素晴らしい大会, 参加するだけではなく見ている側も楽しい大会が幕を閉じることは大変残念なことです。

 しかし, 来年度以降も何とか大会を存続しようという動きがあるようです。その動きを信じつつ, 今回のレポートは終わりにしたいと思います。

 少しでも全国レベルのトンデモなさ, そして本大会の面白さなどが伝わっていれば幸いです。長々とお付き合いいただき, ありがとうございました。